東日本大震災の大津波のすごさは世界を震撼させました。大津波から人々を救った浜口梧陵がモデルの物語「稲むらの火」は、このコラム欄で何回か取り上げましたが、ついに4月から使われている小学校5年生の国語教科書に採用されました。1937年から10年間、国語教科書に載っていましたから、64年ぶりに復活したことになります。
東日本大震災が起こる前から「稲むらの火」の掲載が決まっていたそうで、教科書は全国の公立小学校の6割で使われています。発行元は光村図書出版(東京)で、鷲巣編集本部長は「子どもたちに助け合いの気持ちや郷土への思いやりを学んでほしい」といっています。
今回の伝記は「百年後のふるさとを守る」がテーマ。防災に詳しい河田恵昭関西大教授が書きました。物語の概要を紹介して、浜口が次の津波に備えるため私財を投じ、住民とともに4年をかけて全長約600メートルの堤防を完成させた史実を取り上げています。
物語は江戸時代(1854年)、安政南海地震で紀州藩広村(和歌山県広川町)が大津波に襲われた際、浜口が刈り取った稲わらに火を放ち、暗がりで逃げまどう村人たちを高台に誘導したという実話にもとづいています。
明治時代に作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が英語で小説化したのが最初の伝記でした。それを基に地元の小学校教員が児童向けに翻訳して再構成しました。「稲むらの火」は、アジア各国の言語にも翻訳されています。
2004年のスマトラ沖地震による津波被害後に、小泉純一郎首相はシンガポールのリー・シェンロン首相と会談した際に大恥をかきました。シェンロン首相が「日本では大津波から村人を救った人の物語を教科書で教えているそうですね」と質問され、小泉首相は「そんな物語は知りません」と答えたそうです。