2011年8月4日木曜日
□小松左京さん ~貴重な教訓になった「日本沈没」~
大好きなSF作家、小松左京さんが80歳で亡くなりました。長寿社会の中で80歳といえば、まだ、これから頑張れたのに残念です。代表作の小説「日本沈没」(1973年)は400万部のベストセラーになり、ドラマ化、映画化され、日本中に衝撃を与えました。阪神・淡路大震災、東日本大震災などで日本列島が大きく揺れるたびに、誰しも一瞬「日本は沈没するのだろうか」と不安と恐怖を覚えたはずです。
いくらSF小説とはいえ「日本沈没」は現実味を帯びた描写でした。たとえば、今回発生した東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の地名が映画に登場していますし、偶然ではないことに驚きました。決して荒唐無稽な発想ではなく、未来を構想する文明論で知られる小松左京さんの博学多才な知識に裏付けられ、貴重な教訓を与えてくれました。
亡くなる直前に東日本大震災について「この危機は必ず乗り越えられます。日本は必ずユートピアを実現できると思います。日本と日本人を信じているからです」と語っています。阪神・淡路大震災後も阪神文化の復興に貢献するなど常に「日本を沈没させてはならない」思いを人一倍強く持っていたのです。
映画「日本沈没」のあらすじは、こうです。日本各地で大規模な地震が頻発する中、潜水艇「わだつみ6500」のパイロット・小野寺は、同僚の結城と共に地球科学博士・田所の指揮の下、深海調査に参加しました。その結果、大地震と噴火活動によって日本が1年以内に沈没するという驚愕の事実を知るのです。
総理大臣は諸外国に日本国民の受け入れを要請し、危機管理担当大臣は日本を救う方法を求めて田所を訪ねます。そんな中、小野寺は被災現場でハイパーレスキュー隊員の玲子と出会い、お互いに心引かれるというストーリーです。地球物理学の最新研究を織り込み、地殻変動で日本列島が海に沈むという「日本沈没」は、危機に直面した国家と日本人の姿がセンセーショナルな話題を呼びました。
小松左京さんは、京都大文学在学中にモリミノルの筆名で漫画を描き、高橋和巳さんらと出会い同人誌などに小説を発表し、ラジオのニュース漫才の台本を執筆する一方、米国のSF小説に大きな影響を受けたのです。まず「SFマガジン」誌のコンテストで「地には平和を」が入選しデビュー作となりました。
主な著作では、生物兵器ウイルスと核戦争による人類滅亡を描いた「復活の日」や社会性の強い「日本アパッチ族」、超能力者スパイをめぐる活劇「エスパイ」、第6回日本SF大賞受賞作「首都消失」、自ら映画監督も務めた「さよならジュピター」など多くの話題作を送り出しました。